【手根管症候群】手のしびれは手首だけが原因ではない?応用神経科学から考える改善へのヒント

朝起きると手がしびれている。

夜中に手の痛みやしびれで目が覚める。

ペットボトルのフタが開けづらい。

細かい作業が以前より苦手になった。

スマホを持っているだけで手がジンジンしてくる。

病院では

「手根管症候群ですね。」

と言われ、

湿布や痛み止め、サポーターなどで様子を見るように説明された。

しかし、

「なかなか改善しない」

「少し良くなってもまた戻る」

そんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。

もちろん、手根管症候群では手首の状態を確認することはとても重要です。

しかし私は、

手首だけを施術して改善する方もいれば、それだけでは十分ではない方がいる

ということを数多く経験してきました。

その違いはどこにあるのでしょうか。

今回は一般的な医学的な考え方に加え、私が学んでいる応用神経科学(FNT)の視点も交えながら、手根管症候群について詳しく解説していきます。

 

手根管症候群とは?

手根管症候群とは、手首にある「手根管」というトンネルの中で、正中神経が圧迫されることで起こる代表的な末梢神経障害です。

正中神経は、

・親指

・人差し指

・中指

・薬指の親指側

の感覚に関係しており、さらに親指を動かす筋肉にも関与しています。

そのため、

朝起きたときのしびれ

夜間の痛み

物をつまみにくい

細かい作業が苦手

ボタンを留めづらい

ペットボトルのフタが開けづらい

といった症状が現れます。

症状が進行すると、親指の付け根(母指球)の筋肉が痩せてしまい、つまむ・握るといった動作も難しくなってしまいます。

特に女性に多く、

妊娠・出産期

更年期

糖尿病

甲状腺疾患

長時間のパソコン作業

家事

手作業

などとも関連があると言われています。

まずは医療機関で診断を受けましょう

手のしびれや痛みがある場合、自己判断せず、まずは整形外科などの医療機関で診察を受けることをおすすめします。

手根管症候群と似た症状は、

・頚椎(首)の疾患
・糖尿病による末梢神経障害
・肘部管症候群
・脳や脊髄の病気

などでも起こることがあります。

そのため、まずは医師による診断を受け、重篤な疾患が隠れていないことを確認することが大切です。

そのうえで、

「手術までは必要ないと言われた」

「保存療法で様子を見ましょうと言われた」

「リハビリやセルフケアも取り入れたい」

という方に対して、整体や運動療法、神経学的なアプローチが選択肢の一つになると私は考えています。

 

一般的な整体ではどのようなことを行うの?

手根管症候群に対しては、一般的に次のような保存療法が行われます。

・前腕の筋肉を緩める

・手首のストレッチ

・手関節のモビライゼーション

・姿勢改善

・夜間装具(サポーター)

・炎症が強い場合は注射

・重症例では手術

どれも非常に大切なアプローチです。

実際、これらで改善される方も多くいらっしゃいます。

私自身も神経フロッシングや手首周囲の評価は積極的に行っています。

しかし、それでも改善しない方がいるのも事実です。

では、その違いはどこにあるのでしょうか。

 

なぜ改善しない方がいるのでしょうか?

ここからは私自身が日々の施術で感じていることです。

私はこれまで多くの手の不調をみてきましたが、症状がある場所と、本当に改善のヒントになる場所が一致しないことが少なくありません。

例えば手根管症候群の方をみていると、

前腕が内側へ捻れやすい(回内)

上腕が内側へ入りやすい(内旋)

肩が前へ入り、肩甲骨が外へ開いている

胸椎が丸くなり、呼吸が浅くなっている

このような身体の使い方をされている方が比較的多い印象があります。

もちろん、全員ではありません。

しかし、このような姿勢では前腕の屈筋群が過剰に働きやすくなり、反対に手首や指を伸ばす筋肉(伸筋群)や、手の中にある小さな筋肉(内在筋)が十分に働いていないケースがよくあります。

つまり、

「筋肉が硬いから痛い」

という単純な話ではなく、

身体全体の使い方の結果として、手首へ負担が集中している

可能性も考える必要があります。

だから私は、手首だけではなく、

肩甲骨

胸郭

呼吸

姿勢

歩き方

まで含めて評価するようにしています。

 

神経学的に考えるとさらに面白い

ここからが、私が普段の施術で最も大切にしている考え方です。

一般的には、

「神経が圧迫されているからしびれる。」

という説明を受けることが多いと思います。

もちろん、それはとても大切な考え方です。

しかし私は、それだけでは説明できない方を数多く経験してきました。

例えば、

検査では異常が少ない。

画像でもそこまで悪くない。

それなのに手はしびれる。

逆に画像では手根管が狭くなっていても、症状がほとんどない方もいます。

この違いは何なのでしょうか。

私は、その答えの一つが脳によるコントロールだと考えています。

 

手を動かしているのは筋肉ではなく脳です

私たちは普段、

「手を握ろう」

と思えば自然に握ることができます。

ですが、実際に筋肉へ命令を出しているのは脳です。

さらに脳は、

この手は今どこにあるのか。

どれくらい力を入れているのか。

どの方向へ動いているのか。

その動きは安全なのか。

という情報を、常に身体中から受け取りながら運動をコントロールしています。

その情報を送っているのは、

皮膚

筋肉

関節

靭帯

そして神経そのものに存在する様々な感覚受容器です。

つまり、

脳は感覚情報をもとに「今ならこのくらい力を出そう」と判断しているのです。

 

脳が「危険」と判断すると身体はどうなるのでしょうか?

近年の疼痛科学では、

痛みやしびれは単純に組織だけで決まるものではない

という考え方が広がっています。

脳が、

「この動きは危険かもしれない。」

「この場所は守らないといけない。」

と判断すると、

筋肉を硬くしたり、

動きを制限したり、

痛みやしびれを強く感じやすくすることがあります。

これは決して「気のせい」という意味ではありません。

脳が身体を守るために起こしている、とても正常な反応なのです。

だから私は、

痛い場所だけではなく、

身体全体がどのように情報を脳へ送っているのかを確認するようにしています。

 

神経フロッシングが注目されている理由

最近では「神経フロッシング」というセルフケアも少しずつ知られるようになってきました。

神経フロッシングが注目されている理由の一つは、

神経にも滑走性が必要だからです

神経は身体の中で一本の糸のように固定されているわけではありません。

関節を動かすたびに、

筋肉や筋膜、腱などの間を数ミリ単位で滑りながら動いています。

さらに神経の中には非常に細い血管が張り巡らされており、

そこから酸素や栄養を受け取りながら働いています。

周囲の組織との滑走性が低下すると、

神経そのものだけではなく、その周囲環境にも影響が及ぶ可能性があります。

神経フロッシングは、

神経を強く伸ばすための運動ではありません。

神経へ穏やかな動きを与え、

周囲組織との滑走性や感覚入力を改善することを目的とした方法です。

私は手根管症候群の方にも、この神経フロッシングを取り入れることがあります。

※神経フロッシングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
神経フロッシングとは?手足の痛みや違和感に対する神経学的アプローチ

 

神経フロッシングだけでは終わりません

神経フロッシングはとても良い方法ですが、

私はそれだけで終わることはほとんどありません。

なぜなら、

神経が動きやすくなっても、

その後の身体の使い方が変わらなければ、

また同じ使い方へ戻ってしまう可能性があるからです。

そこで私が重視しているのが、

モーターコントロールです。

モーターコントロールとは、

身体を思った通りに動かす能力のことです。

例えば握力が十分にあっても、

物を落としやすい方がいます。

筋力はある。

でもうまく使えていない。

このような状態は決して珍しくありません。

私はそのような方に対して、

手の内在筋を活性化するアイソメトリック運動なども組み合わせています。

※詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ばね指トレーニング MP関節屈曲位アイソメトリックを神経学的に解説します

 

改善への近道は「脳に新しい成功体験を教えること」

施術を受けると、

「手が軽くなった。」

「しびれが少し減った。」

「握りやすくなった。」

そのような変化を感じる方は少なくありません。

しかし、それだけで終わりではありません。

実はここからが本当のスタートです。

私たちの脳は、とても学習能力の高い器官です。

長年続けてきた姿勢や身体の使い方は、

たとえ負担がかかっていたとしても、

脳にとってはいつもの動きとして記憶されています。

つまり、

身体が変わったとしても、

脳は以前の使い方へ戻そうとすることがあります。

だからこそ、

施術で身体を整えるだけではなく、

新しい身体の使い方を脳へ繰り返し教えていくことが重要なのです。

 

私が施術だけで終わらせない理由

私は毎回、

「施術を受けて終わり」

という考え方はしていません。

もちろん施術はとても重要です。

身体へ適切な刺激を与え、

神経や筋肉が働きやすい状態を作ることは、

改善への大切な第一歩です。

しかし、

本当に身体を変えていくためには、

その良い状態を日常生活でも維持できるようになる必要があります。

そのため私は、

その方の状態に合わせたセルフケアや運動指導をお伝えしています。

そして次回来院時には、

身体がどのように変化したのかを確認し、

必要があれば新しいドリルを追加したり、

刺激量を調整したりしながら、

その方専用のプログラムを少しずつ作り上げていきます。

この積み重ねこそが、

身体を根本から変えていくためには欠かせないと考えています。

 

神経は一日では変わりません

私はよく、

「神経も筋トレと同じですよ。」

とお伝えしています。

一度ジムへ行っただけで、

筋肉が大きく変わることはありません。

神経も同じです。

一度良い刺激が入れば変化は出ます。

しかし、

その変化を定着させるためには、

繰り返し身体へ良い情報を届ける必要があります。

これを神経科学では、

神経可塑性(ニューロプラスティシティ)

と呼びます。

脳や神経は、

経験を積み重ねることで少しずつ変化していく能力を持っています。

だから私は、

短期間だけ楽になることではなく、

数か月後、

数年後も身体を維持できる状態を目標にしています。

 

私が神経科学を学び続ける理由

私は整体師になってから、

たくさんの技術を学んできました。

筋肉。

筋膜。

関節。

姿勢。

どれも本当に大切です。

しかし、

応用神経科学(FNT)と出会って、

私の身体に対する考え方は大きく変わりました。

筋肉を動かしているのは脳。

筋緊張を調節しているのも脳。

身体のバランスを保っているのも脳。

そして、

痛みやしびれを最終的に感じているのも脳です。

だから私は、

筋肉だけを施術するのではなく、

身体全体がどのような情報を脳へ送っているのかを大切にしています。

もちろん、

「脳だけ見ればいい」

ということではありません。

筋肉も大切。

関節も大切。

姿勢も大切。

生活習慣も大切。

そして、

そのすべてをまとめている司令塔が脳だと考えています。

だから私は、

これからも神経科学を学び続け、

もっと多くの方へ分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。

私は、

この考え方が特別なものではなく、

将来もっと一般的な考え方になってほしいと本気で願っています。

 

まとめ

手根管症候群は、

単純に「手首だけ」の問題とは限りません。

もちろん、

正中神経への圧迫や局所の炎症は非常に重要です。

しかし、

身体全体の姿勢、

肩や首の使い方、

呼吸、

神経の滑走性、

感覚入力、

そして脳による身体のコントロールまで含めて考えることで、

改善への新しい可能性が見えてくることがあります。

だから私は、

手首だけではなく、

身体全体を評価し、

その方に合った施術やセルフケアをご提案しています。

 

手のしびれ・手根管症候群でお悩みの方へ

私は、

手根管症候群をはじめ、

・手のしびれ
・ばね指
・握力低下
・物を落としやすい
・細かい作業が苦手
・長時間手を使うと疲れる

といったお悩みに対して、

応用神経科学(FNT)やモーターコントロールの考え方を取り入れながら、一人ひとりのお身体の状態を丁寧に評価しています。

「検査では異常が少ないと言われたけれど症状が続いている」

「手首だけではなく全身から原因を探してほしい」

「自分の身体に合ったセルフケアも知りたい」

そのような方は、ぜひ一度ご相談ください。

一緒に身体の状態を確認しながら、あなたに合った方法を考えていきましょう。

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