両目で見れていますか?目の動きと身体のコントロールの意外な関係

 

こんにちは。
福岡天神にてFNT・神経科学・神経トレーニングを専門行っている、たぐち整体の田口一博です。

突然ですが、皆さんは普段、両目をしっかり使って物を見ているでしょうか?

スマートフォンを見るとき、本を読むとき、歩いているとき、人と会話をするとき。

私たちは毎日、当たり前のように目を使っています。

しかし、実際に目の動きを細かく確認してみると、左右の目がうまく協調できていない方がいらっしゃいます。

例えば、寄り目をしようとすると片方の目だけが十分に内側へ動かなかったり、途中で視線が外れてしまったりすることがあります。

最近、私が施術の中で特に重要視しているのが、この目の働きです。

今回は、私が一般的な整体からFNT(応用神経科学トレーニング)を専門とするようになった経緯と、なぜ目の動きを細かく評価しているのかについてお話しします。


目次

一般的な整体から神経トレーニングへ

以前の私は、筋肉や関節にアプローチする一般的な整体と、FNTによる神経トレーニングを組み合わせて施術を行っていました。

身体の硬さを確認し、筋肉や関節に施術を行い、その後に神経系へのトレーニングを取り入れる。

そうした流れです。

もちろん、一般的な整体でも変化は見られました。

施術後に身体がスッキリ軽くなったと感じる方や、肩や股関節の可動域が広がる方・痛みに対しても良い変化が出る方もいらっしゃいました。

しかし、ここで一つ気になることがありました。

整体の前後で神経系の評価を行っても、私が確認している反射や運動の正確性などには、あまり変化が見られなかったのです。

身体は柔らかくなっている。

動きやすくなったという実感もある。

痛みも緩和している。

それなのに、神経系の評価では大きな変化が確認できない。

この経験が、私自身の施術を見直すきっかけになりました。

身体が柔らかくなることと、正確に動かせることは同じではない

例えば、肩が以前より高く上がるようになったとします。

これは可動域という点では良い変化です。

しかし、その肩を狙った位置で止められるか。

力を入れすぎずに動かせるか。

動かしたときに身体のほかの部分が過剰に緊張しないか。

こうした運動のコントロール能力は、可動域とは別の側面を持っています。

私がFNTで重視しているのは、単に動く範囲を広げることだけではありません。

感覚情報を適切に受け取り、それをもとに身体をどれだけ正確にコントロールできるかという部分です。

もちろん、一般的な整体が神経系に作用しないという意味ではありません。

皮膚への接触や関節の動きも、神経系への感覚入力になります。

ただ、私が行っていた評価では、一般的な整体による変化と、FNTによるトレーニング後の変化に違いが見られたのです。


神経トレーニングに時間をかけることで見えてきた変化

そこで私は、施術時間の使い方を変えることにしました。

一般的な整体に多くの時間を使うのではなく、神経系の評価とトレーニングに時間をかけるようにしたのです。

具体的には、目の動き、バランス、身体の位置感覚、筋肉の出力、運動の正確性などを確認します。

そして、評価で気になった部分に対して感覚刺激や運動課題を行い、再び同じ評価を実施します。

私が大切にしているのは、次の流れです。

評価 → 刺激・トレーニング → 再評価

実際にこの方法を中心にするようになってから、私が確認している運動やバランスの課題で、以前より明確な変化が見られるケースが増えました。

刺激量や練習時間を確保できるようになったことも、一つの要因ではないかと考えています。

ただし、刺激を増やせば増やすほど良いわけではありません。

大切なのは、その方の状態に合った刺激を選び、反応を確認しながら調整することです。

こうした経験を重ね、現在はFNTによる神経トレーニングを専門に行っています。


最近、特に重視しているのが目の評価です

ここからが今回の本題です。

最近、私は目の動きを以前より細かく確認するようになりました。

その中で気づいたのが、両目を協調させる動きが苦手な方が少なくないということです。

例えば、顔の正面にある指先を見つめながら、ゆっくり鼻に近づけていく動作があります。

いわゆる寄り目の動きです。

このとき、左右の目は一緒に内側へ動き、近くの対象に視線を合わせます。

しかし、実際に確認してみると、次のような反応が見られることがあります。

  • 片方の目だけが十分に内側へ動かない
  • 途中までは寄れるものの、すぐに片目が外側へ戻ってしまう
  • 両目を寄せた状態を維持することが難しい
  • 目が疲れやすく、途中で視線を外してしまう
  • 物が二重に見えたり、焦点が合いにくくなったりする

これは、両目の協調運動を考えるうえで興味深い反応です。

ただし、寄り目が苦手だからといって、必ずしも脳や神経に異常があるというわけではありません。

視力や屈折、眼位、疲労、年齢による調節機能の変化など、さまざまな要因が関係します。

また、寄り目ができることと、普段から両目で適切に見えていることは、完全に同じではありません。

そのため、私は一つの動きだけで判断するのではなく、複数の評価を組み合わせるようにしています。


なぜ寄り目が重要なのか?

寄り目は、専門的には輻輳(ふくそう)と呼ばれます。

近くの物を見るとき、左右の眼球を内側へ動かし、両目の視線を同じ対象に合わせる働きです。

例えば、スマートフォンを見るとき。

本を読むとき。

手元で細かい作業をするとき。

私たちは無意識のうちに輻輳を使っています。

この動きがうまくいかない場合、近くの物を見続けることが負担になることがあります。

眼精疲労、頭痛、文字の見づらさ、集中しにくさなどにつながるケースもあります。

寄り目は単なる目の筋肉の運動ではありません

眼球の動きには、外眼筋と呼ばれる筋肉が関係しています。

寄り目では、特に左右の内直筋が働きます。

この筋肉を動かしているのが、動眼神経という脳神経です。

動眼神経は第3脳神経とも呼ばれ、その神経核は中脳に存在します。

さらに、両目を同じ対象に向けるためには、視覚情報を処理する大脳皮質や、眼球運動を調整する中脳などの神経回路が協調して働く必要があります。

つまり、寄り目は単純に目の筋肉だけの問題ではなく、視覚情報と眼球運動を結びつける神経系の働きでもあるのです。


目の動きは身体のバランスとも関係しています

では、なぜ整体で目の動きを評価するのでしょうか?

それは、視覚が身体の姿勢や運動をコントロールするための重要な情報源だからです。

私たちは立っているときも、歩いているときも、常に身体の位置を把握しています。

そのために脳が利用している主な情報は、次の3つです。

1.視覚情報

目から入る情報です。

周囲の景色や物の位置、自分と周囲との距離などを把握するために使われます。

2.前庭感覚

耳の奥にある三半規管や耳石器からの情報です。

頭の回転、傾き、加速度などを感じ取ります。

3.固有受容覚

筋肉や腱、関節などから伝わる感覚です。

手足がどこにあるのか、関節がどの程度曲がっているのかといった情報を脳に伝えます。

脳はこれらの情報を統合しながら、姿勢や身体の動きを調整しています。

例えば、暗い場所で立つと不安定になる方がいます。

これは視覚情報が少なくなることで、前庭感覚や固有受容覚の情報が相対的に重要になるためです。

逆に、人混みやスーパーのように視覚情報が多い環境で、ふらつきを感じる方もいます。

このように、視覚と身体のバランスには密接な関係があります。

ただし、寄り目が苦手なことが、そのまま姿勢の問題や身体の不調の原因になるとは限りません。

重要なのは、目の働きを身体全体の感覚・運動システムの一部として捉えることです。


私が行っている3つの目の評価とトレーニング

現在、私がよく使用しているのが、輻輳、スムーズパースート、ブロックストリングです。

それぞれ目的が異なります。

1.輻輳(寄り目)

近くの対象に視線を合わせる能力を確認します。

指先や小さな目標物を顔の正面からゆっくり近づけ、左右の目が協調して動くかを観察します。

特に確認するのは、左右差や動きの滑らかさ、視線を維持できるかどうかです。

途中で片方の目が外側に戻る場合には、輻輳の維持が難しくなっている可能性があります。

ただし、その反応だけで特定の脳部位の機能低下を判断することはできません。

2.スムーズパースート(滑動性追跡眼球運動)

ゆっくり動く対象を、目で滑らかに追いかける運動です。

例えば、目の前で左右に動く指先を、頭を動かさずに目だけで追いかけます。

このとき、目が途中で止まったり、細かく跳ぶような動きが入ったりすることがあります。

スムーズパースートには、大脳皮質、橋、小脳などを含む複数の神経回路が関係しています。

私はこの動きを通じて、視覚対象をどの程度滑らかに追跡できるかを確認しています。

ただし、動きの乱れは注意力や疲労、対象物の速度などにも左右されるため、一度の評価だけで判断することはありません。

3.ブロックストリング(Brock String)

ブロックストリングは、紐とビーズを使った両眼視のトレーニングです。

紐に複数のビーズを通し、それぞれのビーズに視線を合わせていきます。

目的は、両目を協調させながら距離の異なる対象を見る練習です。

例えば、一つのビーズを見たとき、左右の目からの情報が適切に利用されていると、紐がビーズの位置で交差するように見えることがあります。

この見え方を確認することで、両眼視の状態を考える手がかりになります。

ブロックストリングは、輻輳や両眼視機能のトレーニングとして利用されています。

ただし、見え方には個人差があり、斜視や複視などがある場合には専門的な評価が必要です。


片方の目が寄れないことと、身体の左右差には関係がある?

ここは私自身、臨床で特に関心を持っている部分です。

目の動きに左右差がある方では、身体の動きやバランスの評価にも左右差が見られることがあります。

眼球運動に関わる大脳皮質、中脳、橋、小脳などの神経回路は、姿勢や身体の運動調整に関係する神経系とも連携しています。

例えば、小脳は眼球運動の精度を調整するだけでなく、姿勢や四肢の協調運動にも重要な役割を持っています。

また、前庭神経核は眼球運動と姿勢制御の両方に関係しています。

このように、目の動きと身体のコントロールを関連づけて考えることには、神経科学的な背景があります。

左右の神経経路は、単純な対応ではありません

神経系には、同側の身体に関係する経路もあれば、反対側の身体に関係する経路もあります。

例えば、大脳皮質の一次運動野は、主に反対側の手足の運動に関係しています。

一方、小脳半球は、主に同側の手足の運動調整に関係しています。

脳幹については、関与する神経核や神経経路によって左右の関係が異なります。

また、眼球運動そのものも、寄り目、スムーズパースート、サッカードなどによって働く神経回路が異なります。

そのため、片方の目がうまく動かないからといって、特定の脳部位や反対側の半身に問題があると判断できるわけではありません。

私が重視しているのは、実際の身体の反応です

私は、目の動きに左右差が見られた場合、身体のバランスや手足の運動にも左右差がないかを確認しています。

例えば、左右の目の動きに違いがある方に対して、片脚立ちや手足の協調運動などを確認します。

そのうえで、目のトレーニングを行い、再び同じ身体の評価を実施します。

目の動きが変わった。

バランスが安定した。

手足の動作が滑らかになった。

こうした変化が見られることもあります。

一方で、変化が見られない場合もあります。

また、短時間での変化には、練習による慣れや注意の向け方などが影響する可能性もあります。

そのため、一度の変化だけで原因を断定することはできません。

それでも、目の動きと身体のコントロールをそれぞれ評価し、トレーニング後の変化を比較することは、その方の身体の働きを理解するための手がかりになると考えています。


目のトレーニングをすれば、身体の不調は改善するのか?

ここも大切な部分です。

目のトレーニングを行えば、すべての身体の不調が改善するわけではありません。

また、目の動きに左右差があることが、必ずしも不調の原因とは限りません。

それでも私が目の評価を重視するのは、目の働きが身体の姿勢や運動を調整する神経系と深く関係しているからです。

実際の施術では、目の動きだけでなく、前庭感覚、固有受容覚、皮膚感覚、バランスなども確認します。

そして、その方にとって必要と考えられるトレーニングを選択していきます。

私が目指しているのは、単に筋肉を柔らかくすることではありません。

自分の身体が今どこにあり、どのように動いているのか。

その情報を利用しながら、身体をより正確にコントロールできる状態を目指すことです。

なお、物が二重に見える、片目が急に動かしにくくなった、急激な視力低下が起きたといった症状がある場合には、トレーニングではなく医療機関での評価が優先されます。


最後に|身体の動きを変えるために、目の働きにも目を向ける

以前の私は、身体が硬ければ筋肉や関節にアプローチすることが中心でした。

もちろん、今でも筋肉や関節の状態を確認することは大切だと考えています。

しかし、FNTを学び、実際の施術で評価とトレーニングを繰り返す中で、私の身体に対する考え方は大きく変わりました。

身体を動かしているのは筋肉ですが、その動きを調整しているのは神経系です。

そして神経系は、目や耳、皮膚、筋肉、関節などから届く感覚情報を利用しています。

最近、私が両目の働きを細かく確認しているのも、そのためです。

寄り目ができるか。

動くものを滑らかに追いかけられるか。

左右の目を協調させて使えているか。

一見すると身体の痛みや動きとは関係がなさそうな評価ですが、そこから身体のコントロールを考えるヒントが得られることがあります。

これからも私は、FNTの考え方をもとに、一人ひとりの身体の反応を丁寧に確認しながら、神経系の働きに着目したトレーニングを行っていきたいと思います。

福岡・天神で、長年続く身体の不調や、思うように身体を動かせないといったお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

福岡天神・FNT神経科学専門|たぐち整体
FNTマスタートレーナー
田口一博

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